竣(しゅん)の作品3


銀時計・ダイヤモンド・金平糖

ダイヤモンドの金平糖

 

古い、過去、田舎。未だ発展していない日本に似た世界の何処か。 

そこにいる四人の子供は、いつもいつも「ドキドキ」を探している。 

胸の高鳴るような。皆で楽しめる。とてもとても楽しい「ドキドキ」を。 

とある、暑くも寒くもない、「それ」が起こるまではいつもと変わらないそんな日 

子供の一人がいつもの場所に走ってくる。 

大きく手を振りながら。大きな声を出しながら。大きく足を動かして。 

三人の前で立ち止まるやいなや手を突き出す。 

その手にあったものは銀色の丸い時計。 

それが何なのか三人が問う前に一人は大きな声で言う。 

「ついにドキドキが現れた!」 

説明する時間も待ちきれないと言わんばかりに三人の手を引き、一人は走りだす。 

求めていた「ドキドキ」を持ってきた人物の元へ、早く早くと三人を急かしながら。

 

「ようこそ諸君!私がドキドキを持ってきた!」 

両手を広げ、いかにも「紳士」といった格好で出迎えたのは、見覚えのあるおじいさん。 

先導してきた一人の祖父で、よくおもちゃをくれるいい人。 

紳士は一人が見せたのと全く同じ銀時計を手からぶら下げて見せ、言い放つ。 

「これは時計だ、高貴なものが持つ懐中時計だ。 

 これは象徴だ、これを持つものは高貴な存在だと示す道具だ。 

 これは理由だ、高貴であるがゆえにこれを持っているという証明だ。 

 これを持つものが高貴なゆえにこれは高貴な存在であり、 

 これが高貴であるがゆえに持つものは高貴である。」 

四人の子供がはてなマークを浮かべるのを満足気に見て頷き、再度口を開く。 

「これは銀時計。高貴な存在が持つ物。 

 高貴な存在は宝を持っている。銀時計はそれを示すヒントであり鍵であり答えだ。 

 これが示す場所には宝があり、宝がある場所にはこれがある!」 

困惑する四人に近寄り、一人が持つ銀時計を手に取り、ケースとなっている部分を開く。 

中から出てきた紙には大きな宝石の絵と、丸いトゲトゲが沢山入った瓶の絵。 

「これは始まりの銀時計であり、終わりの銀時計でもある。 

 君たちはこれから私の用意した場所に行き、私の銀時計が示すお宝を探す。 

 見事そのお宝を見つけ出せたらそのお宝とご褒美をあげよう。」 

そう言って老紳士は歩き出す。説明は終わったとも言わずにただ歩き出す。

 

唖然とした顔で聞いていた四人はふと目を輝かせ、互いの顔を見ると大きく頷き走りだす。 

宝石といえばダイヤモンドしか知らないような四人の子供。 

丸いトゲトゲはいつかおじいさんにもらった金平糖。 

あの日見た、お宝の王様とも言える輝きと、あの日感じた食べる感激を求めて。 

一度も振り返らず歩き続ける老紳士を。 

「ドキドキ」を追い、求め、走りだす。

 

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